「現場の技術を継承したいが、マニュアルを作る時間がない」
「せっかく作った手順書も、文字ばかりで誰も読んでくれない」
「外国人労働者向けに翻訳するのが大変すぎる」
これらは、多くの製造業の経営者が抱えられている共通の悩みです。
日々の生産業務に追われ、マニュアル作成は常に後回し。
結果として、特定のベテラン社員しかできない作業(属人化)が増え続けています。
しかし、今は「生成AI」と「動画」を組み合わせることで、この作業時間を劇的に短縮可能です。
これまでの「文字をゼロから続ける作業」はもう不要です。
本記事では、製造業の現場において、動画と生成AIを活用してマニュアルを自動作成する具体的な手順を解説します。これを読めば、マニュアル作成業務は「苦痛な作業」から「一瞬で終わるルーチン」へと変わります。
なぜ製造業のマニュアル作成は「終わらない」のか
解決策を知る前に、なぜ従来の方法では失敗するのかを明確にします。原因は大きく分けて3つあります。
1. 「言語化」の難易度が高すぎる
製造現場の作業には「コツ」や「勘」が含まれます。「ボルトを強めに締める」という表現一つとっても、具体的にどれくらいの力加減なのか、文字だけで伝えるのは不可能です。作成者はこの表現に悩み、膨大な時間を浪費します。
2. 画像の切り出しと貼り付けの手間
WordやExcelでマニュアルを作る際、最も時間を奪うのが「画像の加工」です。
- 写真を撮る
- PCに取り込む
- エクセルに貼り付ける
- サイズを調整する
- 赤枠や矢印を入れる
この「事務作業」だけで、本来の業務時間の多くが失われています。
3. 作った瞬間から情報が古くなる
製造ラインや工程は日々改善されます。しかし、修正の手間がかかる紙やPDFのマニュアルは、一度作ると修正されません。結果、現場の実態とマニュアルの内容が乖離し、「マニュアルなんて役に立たない」という空気が生まれます。
生成AI×動画がもたらす「マニュアル革命」
生成AIを活用した動画マニュアル作成は、これらの問題を根本から解決します。
基本的な仕組みは以下の通りです。
1.作業風景を動画で撮影する
2.AIが動画を解析し、重要なシーンを自動で画像化する
3.AIが動画内の音声を認識し、テキスト(説明文)にする
4.AIが手順ごとに章立てを行い、マニュアル形式に整える
つまり、人間がやるべきことは「作業を撮影すること」だけになります。
あとはAIが下書きを9割完成させてくれます。
【実践編】生成AIで動画からマニュアルを自動作成する5つの手順
ここからは、具体的な作成フローを解説します。
今の時代高価な専用ソフトを使用する必要はありません。
汎用的な生成AI(ChatGPTやGemini)を活用するか、NotebookLMを活用することをオススメします。
手順1:動画データを生成AIに読み込ませる
撮影した動画ファイルを、マルチモーダル(動画・画像・テキストを同時に理解できる)対応の生成AIにアップロードします。
今回はGoogleの神ツール「NotebookLM」を利用していきます。
まずは「ノートブックを新規作成」をクリックします。

次に「動画データ」をアップロードします。
※動画以外にもPDFやテキスト、マークダウン、音声、画像、ウェブサイトやYouTubeリンク(公開のみ)、様々な内容を追加することができます。

「ソース」は「情報源」、チャットは「得たい情報を入力する場所」、Studioは「NotebookLM」についている機能です。

手順2:プロンプト(指示文)を入力する
動画をアップロードしたら、AIに対して以下のような指示を出します。
この指示の良し悪しで品質が決まります。そのまま使えるテンプレートを用意しました。
【指示プロンプトの例】 あなたは製造業の熟練指導員です。添付した動画は「〇〇部品の組立工程」です。この動画をもとに、新人作業員向けの手順書を作成してください。
出力条件:
- 動画から重要な作業シーンのスクリーンショットを抽出し、その説明を加えてください。
- 安全確認が必要な箇所(指挟み注意など)は、強調して記載してください。
- 専門用語を使わず、中学生でもわかる言葉で説明してください。
- 以下のフォーマットで出力してください。
フォーマット: 手順番号: 作業内容: 重要なポイント(コツ): 注意点(安全)
小田じゅん上記のフォーマットを「チャット欄」の「指示を入れる場所」に入れます。


手順3:AIが出力した内容を「監査」する
AIは数分でテキストと構成案を出力します。
しかし、製造業においてAIを盲信するのは危険です。必ず「人間の目」で以下の点を確認します。
数値の正確性: トルク値や温度などの数値が間違っていないか。
安全面の配慮: 危険予知の観点が抜けていないか。
順序の整合性: 手順が前後していないか。
AIは「下書き」や「たたき台」を一瞬で出してくれますし、状況によっては、9割近くまで完成に持っていってもらえることもできるツールです!
当然、最終責任は人間が持つという意識でチェックを行います。
手順4:WordもしくはGoogleドキュメントシートにまとめる
AIが作成した文章をWordやGoogleドキュメントシートに貼り付けて、レイアウトを整えたら完成です!
図解を入れたい場合は、NotebookLMと併用して、「Gemini」のCanva機能を活用することをオススメします。
Geminiの使い方については下記の動画のとおりです。
AIマニュアル作成における注意点とリスク対策
便利な生成AIですが、製造現場特有のリスクも存在します。
情報漏洩(セキュリティ)への対策
設計図や独自の製造ノウハウが含まれる動画は、NotebookLMを利用すれば、社外に公開されることはありません。


ChatGPTやGeminiを使うにしても、「学習データとして使用しない」設定(オプトアウト)になっているように使ってください。
Microsoft Copilotであれば「Microsoft365 Copilot(月額4200円~)」であれば、エンタープライズ機能がついているため、社外に情報が漏洩しません。
これらのことは最低限として社内で理解されておくことをオススメします。
ハルシネーション(嘘の生成)への警戒
AIは、動画や文章に存在しない手順を「もっともらしく」捏造することがあります。
これを「ハルシネーション」と言い、幻覚と言われます。
特に製造業に関しては「絶対にやってはいけない禁止事項」が「やってもよい手順」として書かれていないか、ベテラン社員によるダブルチェックが必須です。
人間も間違いがあるように「AI」も間違いがあります。AIツールを神格化し過ぎないようにしてください。
導入効果:実際にどれくらい楽になるのか
たとえば、マニュアル作成をするのに、 A4用紙5枚のマニュアル作成に「5時間(300分)」かかっていた作業が、 撮影(10分)+AI解析・編集(20分)の計「30分」で完了する仕事になりました。
つまり、これだけで、作成時間は10分の1(つまり生産性10倍)になりました。
空いた時間は、品質管理や改善活動など、人間しかできない付加価値の高い業務に使われています。
さらに、動画付きのマニュアルになったことで、新人からの「ここはどうやるんですか?」という質問が激減しました。
新人は動画を見て予習・復習ができるため、指導担当者の負担も大幅に軽減されています。
まとめ:まずは「スマホで撮影」から始めよう
マニュアル作成が終わらないと嘆く前に、まずは手元のスマートフォンで作業風景を撮影してみてください。
- 撮る(スマホでOK)
- AIに投げる(GeminiかNotebookLM)
- 整える(人間が確認)
この3ステップで、あなたの会社のノウハウ継承は劇的に進みます。
完璧なマニュアルを目指す必要はありません。
AIを使えば、修正も一瞬です。
「まずは60点の動画マニュアルを出し、現場の声を聞きながらアップデートする」というサイクルこそが、変化の激しい現代の製造業における正解です。
今日から、文字を打つ手を止めて、動画を撮り始めましょう。それが現場の働き方改革の第一歩です。
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