「生成AIに依存するとバカになる」「集中力や意欲が低下する」は本当か?MIT論文を読み解いた上で僕が伝えたいこと

2025年6月、MIT Media Labなどの研究チームが発表した論文が話題になりました。ChatGPTなどの生成AIに依存すると脳活動が低下し、集中力や意欲が落ちるという内容です。

KDDI総合研究所のリサーチフェロー・小林雅一氏もこの論文を紹介するコラムを公開しています。

参考:生成AIに依存すると脳活動が低下したまま戻らない――脳波測定から導かれたショッキングな観察結果とそれを回避するための方法(KDDI総合研究所)

こういった研究結果が出ると、表面的な部分だけを読んで「やっぱり生成AIに頼るとバカになるんだ。使わない方がいい」と短絡的に結論づけてしまう人が一定数います。

SNSでも、そのような論調のポストが拡散されているのを見かけます。

先に断っておきますが、この記事はKDDI総合研究所のコラムや元の論文を否定するものではありません。

また、生成AI研修講師としてのポジショントークで言いたいわけでもありません。

ただ、僕が30以上の業種でAI活用やSNSを支援し、自分自身もフル活用してきた立場から言えることがあります。

「結局のところ、使ってみて便利なら使えばいいし、不便なら使わなければいい」というシンプルな話なのに、なぜか極端な議論になりがちなのが気になるため、記事にしました。

MIT論文が本当に言っていること──「使うな」とは書いていない

まず、引用元のKDDI総合研究所コラムで紹介されているMIT Media Labの調査内容を正確に整理しておきましょう。

この調査では、ボストン近郊に住む18~39歳の男女54名を3つのグループに分け、SATの小論文課題を与えています。

1つ目のグループはChatGPTを使い、2つ目は検索エンジンを使い、3つ目は自分の頭だけで小論文を書く。その間の脳波を測定し、完成した小論文の質も英語教師が評価するという実験です。

結果として、ChatGPTを使ったグループは脳活動が最も低く、小論文の独創性も低かったという報告がなされています。特に、3本目の小論文を書く段階になると、被験者の多くが課題をそのままAIに入力して出力を待つだけになっていたとのことです。

ここで重要なのは、この論文の「後半部分」です。

論文では追加実験も行われています。最初から自分の頭で考えて3本の小論文を書いたグループの中から9名を選び、今度は生成AIを併用して小論文を書き直させたところ、脳活動がさらに活発になり、小論文の質も向上したのです。

つまり、この研究が示しているのは「生成AIは使うな」ではなく、「使い方次第で結果はまったく変わる」ということです。

最初から丸投げするのではなく、まず自分で考え、自分の思考を深めるためのツールとして生成AIを活用すれば、むしろパフォーマンスは上がる。そう読み取れる内容です。

「やっぱりAIは危険だ」と結論づける人が見落としていること

先ほど触れたように、この調査の被験者は54名です。コラムの中でも「最終的な結論を出すには追加の調査が必要」という趣旨のことが書かれています。

つまり、あくまで暫定的な観察結果であり、確定的な科学的結論ではないのです。

それにもかかわらず、タイトルだけ、あるいは前半のショッキングな部分だけを読んで「生成AIは脳をダメにする」という極端な結論に飛びつく人がいます。

これは、生成AIの問題というよりも、情報の読み方・リテラシーの問題です。

研究論文やそれを紹介するコラムの目的は、ある条件下での観察結果と考察を共有することです。

それを「だからAIは使うべきではない」という白黒の結論に変換してしまうのは、論文の趣旨から外れた解釈と言わざるを得ません。

実体験:生成AIをフル活用して起きた「事実」

ここからは、僕自身の実体験をお伝えします。

僕は2014年からAI活用に関する研修や講演を行い、官公庁、商工会議所、業界団体、企業など30以上の業種に向けて生成AIの活用法を伝えてきました。そして講師として教えるだけでなく、自分自身の業務でも日常的に生成AIをフル活用しています。

その結果として起きた、具体的な「事実」を2つ挙げます。

事実①:議事録の作成時間が3時間以上 → 大幅に短縮

以前は1つの議案に対して議事録を作成するのに3時間以上かかっていました。

会議の内容を聞き直し、要点を整理し、文章としてまとめる。

この一連の作業が、生成AIの文字起こし機能や要約機能を組み合わせることで劇的に効率化されました。

事実②:ホームページの改修が1カ月以上 → わずか3日で完了

ホームページの改修も大きく変わりました。

構成の設計からコピーライティング、コーディングの補助まで、以前は外注も含めて1カ月以上かかっていたプロジェクトが、生成AIを活用することでたった3日で完了しました。

もちろん、AIが全自動でやってくれたわけではありません。

最終的なチェックや方向性の判断は僕自身が行っています。

しかし、それまで膨大な時間をかけていた「下準備」や「素材づくり」の部分をAIに任せることで、人間にしかできない「判断」や「決定」に集中できるようになったのです。

これは僕だけの特別な話ではありません。

僕の研修を受けた多くの方が、同じような業務効率化を実感しています。

▶ 関連記事:研修の導入事例・実績はこちら

生成AIで「バカになる人」と「賢くなる人」の違い

MIT論文の結果が示しているのは、結局のところ「道具の使い方」の問題です。

電卓が登場したとき、「電卓を使うと計算力が落ちる」と言われました。

表計算ソフトが登場したとき、「Excelに頼ると数字に弱くなる」と言われました。

カーナビが普及したとき、「カーナビに頼ると道を覚えなくなる」と言われました。

これらの指摘には一理あります。

しかし、だからといって電卓やExcelやカーナビを使わない方がいいとはなりません。

道具に使われるのではなく、道具を使いこなす側に回れるかどうか。それが分かれ目です。

生成AIも同じです。考えることを放棄してすべてをAIに丸投げすれば、思考力が鈍るのは当然です。

一方で、自分の考えを持った上でAIを壁打ち相手にしたり、アイデアの叩き台として活用すれば、思考の幅はむしろ広がります。

先のMIT論文でも、まず自力で取り組んだ後にAIを使った被験者は、脳活動も小論文の質も向上したと報告されています。これがまさに「使い方次第」の証拠です。

▶ 関連記事:【経営者・管理者必見】AIの扱い方を間違えると離職者やメンタルを病む人が続出する理由

生成AIがある時代に必要な「新しい学び方」と「新しい働き方」

僕がもう一つ伝えたいのは、生成AIの登場によって「学び方」や「働き方」そのものをアップデートしていく必要があるということです。

たとえば、これまでの「学び」は、情報を暗記し、それを正確にアウトプットすることが重視されてきました。しかし、生成AIがいつでも正確な情報を引き出せる時代において、暗記力だけに価値を置く学習スタイルは見直す時期に来ています。

これからの時代に求められるのは、AIから得た情報をどう解釈するか、どんな問いを立てるか、どう判断するかという「考える力」と「問いを立てる力」です。

仕事の現場でも同じことが言えます。

生成AIに任せられる作業は積極的に任せ、人間は「何を作るか」「誰に届けるか」「なぜやるのか」というレイヤーの意思決定に注力する。

そうすることで、仕事の質も生産性も上がっていきます。

「生成AIを使うとバカになるから使わない」という選択は、裏を返せば「新しい道具を使いこなすスキルを身につけない」という選択でもあります。

それは果たして賢い判断なのでしょうか。

▶ 関連記事:AIを学ばない人は時代遅れどころか老害になる理由

まとめ:「使う or 使わない」ではなく「どう使うか」で決まる

最後に、この記事のポイントを整理します。

MIT Media Labの調査は、生成AIに丸投げすると脳活動が低下するという興味深い観察結果を示しました。これ自体は重要な知見です。しかし同時に、まず自力で考えた上でAIを使えば、逆に脳活動やアウトプットの質が向上するという結果も示されています。

つまり問題は「AIを使うかどうか」ではなく、「AIをどう使うか」です。

僕自身は、生成AIをフル活用することで議事録の作成やホームページの改修に費やしていた時間を大幅に短縮し、本来集中すべき仕事に時間を使えるようになりました。

便利だと感じるなら使えばいいし、不便だと感じるなら使わなければいい。ただそれだけのことです。「使ったらバカになる」と決めつけて思考停止するのではなく、まずは触ってみて、自分の業務や学びにどう活かせるかを考えてみる。その姿勢こそが、生成AI時代を賢く生き抜くための第一歩だと僕は考えています。

シンプルブランドが選ばれる理由
研修テーマ一覧
研修・講演のお問い合わせはこちら

参考文献

  • URLをコピーしました!